思考/考えごと

ドイツに渡るベトナム人たちの今、列車内の出会いから見える“移住のリアル”

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フランクフルトからバーゼルへ向かう列車内。たまたま声をかけた人物は、ベトナム・ゲアン省から来た男性だった——。

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昨年のテト休暇での欧中旅行、フランクフルトからバーゼルに向かう列車の中で、経由駅で降りる際にたまたまベトナム人を見かけた。

8年間ベトナムに駐在していた筆者は、異国の地でもベトナム人をすぐに見分けられる。

ベトナム語で話しかけると、彼は「奥さんと子どもをベトナム・ゲアン省に残して出稼ぎに来た」と語った。職業までは聞き取れなかったが、「いつまでいるかはわからない」と語る姿に、移住労働の現実がにじむ。

職業は聞き取りにくかったのですが、上のことがわかった。

当記事はこんな方に向けて書いた

  • 🇻🇳 ベトナムと関わる日系ビジネスマンで、労働者の欧州流出の背景理解に興味ある方
  • 🌏 移住・海外就職を考える若者で、ドイツという選択肢を事例として捉えている方
  • 📰 日越関連メディア編集者で、取材のヒントにしたい方
  • 🤝 多文化共生や国際協力の研究者で、ドイツ×ベトナムの市民交流・移民研究の情報収集としてお考えの方

この記事から得られるもの

  • 異国での偶然の出会いが示すドイツ定着する人の実感値
    ベトナム人の「ドイツ定着のリアリティ」を裏付ける。
  • 国家間の人材戦略の延長上のリアルな市民の存在
    個人の人生(ゲアン省からドイツへ)と国家の労働力政策(人的資源不足×ODA)とがリンクしてくる。
  • ベトナムからドイツへという新しい「出稼ぎ先」
    日本や台湾ではなく「ドイツ」が選ばれる時代背景(給与、待遇、永住権制度)

🔍 ドイツに暮らすベトナム人の基本統計(ドイツ連邦統計庁、他:2023年末時点)

  • ドイツに住むベトナム人の総数: 約20万人(うち永住権・市民権保有者含む)
  • 旧東ドイツ時代: 社会主義国同士の協定により、労働者として数万人が渡独
  • 現在の流入
    • 留学生、技能実習生、医療・介護・ITなど熟練労働者
    • ベトナムでは年間数千人規模でドイツ就労を目指す制度あり
  • ドイツ国内のベトナム人集中地域
    • ベルリン(リヒテンベルク区など)
    • ライプツィヒ、ドレスデン(旧東独エリア)

2023年時点のデータ(ドイツ連邦統計庁/Statistisches Bundesamt)によると、2023年末時点でドイツに居住するベトナム系住民の総数は約215,000人とされている。

ここにはベトナム国籍のまま居住している人々だけでなく、ドイツに帰化した人々やその子孫も含まれているようだ。

🇩🇪🤝🇻🇳主な労働者受け入れに関する協定・枠組み

元々ドイツは旧東ドイツ時代からベトナム人との歴史的な交流があり、現在も約20万人以上のベトナム系住民が暮らすとされている(非公式推計含む)。

ベルリンやライプツィヒにはベトナム人コミュニティが根付いており、語学・住環境・宗教など、ソフトランディングの面でも比較的ハードルが低い。

  • 1970~80年代 旧東ドイツは社会主義国だったベトナムと「友好関係」にあり契約労働者の受け入れを行っていた
  • 現在も留学や技能実習など10万人以上のベトナム人が在住
  • 介護人材育成・派遣プログラム(2012年開始)
  • 職業訓練生プログラム(Berufsbildungspartnerschaft)
  • 熟練労働者移民法(2019年)
  • GIZ(ドイツ国際協力公社)を通じた労働者派遣支援など

上の歴史的な協定から、ベトナムはドイツの重要なパートナーの一つとされている。

🇩🇪 ドイツは今、ベトナム人を必要としている

近年、ドイツとベトナムの関係が急速に深まっているのをご存じだろうか?背景には、ドイツ国内で深刻化する労働力不足と、若くて優秀な人材を多く抱えるベトナムの存在感の高まりがある。

ベトナム人労働者は“人手不足の救世主”

ドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領は2024年1月24日にベトナムのファム・ミン・チン首相との会談で、

「ベトナム人労働者は、ドイツの人的資源不足を補う重要な存在になりうる」

と述べています。この会談で、シュタインマイヤー大統領は、ドイツが深刻な労働力不足に直面しており、ベトナム人労働者がその解決に寄与することを期待していると述べました。

ドイツ国内では特に、IT・エンジニア・介護・外食業などを中心に、労働力の不足が年々深刻化しており、即戦力としての外国人労働者の受け入れが国策レベルで推進されている。中でもベトナム人は、まじめで勤勉、学習意欲が高いという理由から、高く評価されている。

シュタインマイヤー大統領:ベトナム人労働者はドイツの人的資源不足改善に貢献できる

ドイツ大統領はファム・ミン・チン首相と会談し、ベトナム人労働者がすぐにでも働く機会を得て、この国の労働力不足状況が改善されることを期待している。

今朝、政府本部でドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領と会談した際、ファム・ミン・チン首相は、ベトナムは地域と世界におけるドイツの役割と立場を常に尊重しており、あらゆる分野で二国間関係を深めていきたいと述べた。

シュタインマイヤー大統領:ベトナム人労働者はドイツの人的資源不足改善に貢献できる - VnExpress

月給3,500ユーロ(約56万円)現地同等の待遇

2022年〜2023年には、ベトナム政府の**海外労働センター(MOLISA)と、ドイツ連邦労働庁・ドイツ産業会議所が協力し、熟練労働者の選抜プログラムを実施。対象は主に、

  • 情報技術(IT)
  • 電子工学
  • 食品加工
  • ホスピタリティ(レストラン・ホテル)

上記の分野で大学卒+実務経験2年以上がある人材が対象となっており、条件を満たせば**月給3,500ユーロ(約56万円/約9,000万ドン)という高水準の給与で受け入れられる。

さらに、給与だけでなく現地人と同じ福利厚生(健康保険・年金制度など)も保証され、長期的な就労・定住も視野に入っている。

ドイツに行く情報技術労働者は9,000万ドンの給与を受け取ることができる

情報技術、電子工学などの大学を卒業してドイツで働く人は、月給 3,500 ユーロ (約 9,000 万ドン) を受け取ることができます。

2022年から2023年の期間にドイツで働く熟練したベトナム人労働者を選抜するプログラムが、海外労働センター(労働・戦傷病兵・社会省)とドイツ連邦労働庁、ドイツ産業会議所、オンラインで署名された。 11月10日の商業。

採用条件は、大学以上を卒業し、情報技術、電子工学、食品加工、レストランやホテルの経営に2年以上従事したこと。各職種の従業員数は公表されていない。月給 3,500 ユーロに加えて、ベトナム人労働者は同じ立場で現地人と同様の福利厚生を享受し、この国で長期的に働くことができます。

ドイツに行く情報技術労働者は9,000万ドンの給与を受け取ることができる - VnExpress

ベトナム国内での「ドイツ志向」も加速

ベトナムでは1万人以上がドイツ語を学び、医療・介護・ITなどを通じての渡独を目指す。「日本や台湾だけじゃない」。若者の目線は確実に欧州にも向き始めている。

ベトナム国内でも「ドイツを目指す若者」が急増中。現在、1万人以上のベトナム人がドイツ語を学んでいると言われ、特にハノイ・ホーチミンの語学学校ではドイツ語クラスが満席になるケースも珍しくない。

背景には、欧州の中でもドイツが安定した雇用と高い生活水準を提供している点がある。米英と比べてビザ取得のハードルが低めであることも人気の理由の一つだ。

東南アジアでドイツ語学習熱が急激な高まり 背景に人不足の独が熟練外国人労働者採用

独外務省によると、ベトナムでは推定1万4000人、マレーシアでは1万5000人、タイでは1万7000人以上がドイツ語を学んでいる。

東南アジアでドイツ語学習熱が急激な高まり 背景に人不足の独が熟練外国人労働者採用(The News Lens Japan) - Yahoo!ニュース

まとめ:ドイツが求め、ベトナムが応じる——この流れはしばらく続く

筆者が次に降り立ったバーゼルBAD駅でも、また1人のベトナム人女性とすれ違った。もはや偶然ではないのかもしれない

世界中で人材獲得競争が激化する中、ドイツがベトナムに注目しているというのは、単なる一時的な流れではなく、国家レベルでの戦略的パートナーシップの一部といえる。

アジアとヨーロッパ、そして人材と経済をつなぐ新たな架け橋として、このドイツ・ベトナムの連携に今後も注目が集まりそうだ。

ドイツに暮らすベトナム人は、およそ20万人。その多くが今後、社会の中核労働者として受け入れられていくだろう。ODA援助という国家レベルのつながりだけでなく、現場には「人生を背負ってやってきた人々」がいる。

バーゼル行きの列車での小さな会話が、そんな未来を予感させた。

本記事は本動画内の旅行での体験を元に作成しています。

  • この記事を書いた人

人生ゆたか

株式会社リッチメーカー代表取締役。元アマボクサー→営業会社→世界一周'13〜14→ウェブ業界10年'14〜24(内8年ベトナムハノイ駐在'16〜24、ベトナム現地法人設立&元代表、ITオフショア経営、ビル運営、フリーペーパー創刊、オウンドメディア運営等)→ 世界二周目'24→ 株式会社リッチメーカー創業。旅した国/57カ国

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