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【書評】『覚悟がすべてを変える 運とお金の正体』安藤 功一郎 (著)を読んだ感想
安藤社長の著書『覚悟がすべてを変える』を拝読しました。
率直に言って——10年前にこの本と出会っていたら、人生の選択は少し違っていたかもしれません。
海外での起業や独立を志す人にとって、本書はまさに必読のバイブル。
「運」や「お金」といった一見つかみどころのないテーマを、著者自身の体験を通じて極めて実践的に語られています。
読後には、“覚悟”という言葉の本当の意味を改めて考えさせられました。
備忘録も兼ねて、読書中に印象に残った点・気づきを以下にまとめていきます。
海外起業はとにかくスモールスタート
- スモールスタートするのが社長 1人だけ、または社長とバイト 2 ~ 3人だけならば、社長がすべてを把握し、すべてをコントロールできる。
- そのとき、もともと身軽なスモールスタートならば、トラブルや変化を見つけることも容易だし、素早く動いて対応できる。最悪の場合、撤退するしかないとしても、失敗の影響を小さくできる。
- スモールスタートするのが社長 1人だけ、または社長とバイト 2 ~ 3人だけならば、社長がすべてを把握し、すべてをコントロールできる。
- 意志決定する 1人が「全部わかっていること」は、とても重要だ。
- 社長が問題を直接聞いて、駆けつければよいのだから。
- タイで最初に起業した携帯電話販売業は僕 1人。その次の旅行会社は僕 1人と事務を頼んだタイ人の女の子 4人だけ。どちらも典型的なスモールスタートだった。
- メリットの裏返しで、あまりお金はかからないが資金調達が難しい、
- 小規模なビジネスだから、大きなビジネスにして、大きな利益を上げるまでに、時間がかかる。
私がベトナムで8年間駐在していた間、数多くの日本人が現地でビジネスを展開していく姿を見てきました。
その中で特に印象的だったのは、大きな資金を投下して開業したケースほど、うまくいっていないという現実です。
退職金をつぎ込み、一気に店舗や事業を立ち上げる——そんな挑戦は決して少なくありませんでしたが、継続的に成功している例はごくわずかでした。
一方で、成功している人たちには共通点があります。
それは、スモールスタートを徹底しているということ。
たとえば飲食店であれば、内装費を最小限に抑え、家賃の安いロケーションを選び、スタッフもアルバイト1名から始めるなど、リスクを最小限に抑えた形でスタートしていました。
もちろん、外国人が現地で資金調達を行うのは容易ではありません。
だからこそ、自力で積み上げていく小規模ビジネスの方が、結果的に息の長い経営につながるのだと思います。
「いかに失敗の影響を小さくするか」——この視点は、タイでもベトナムでも、他の国でもまったく共通していると感じました。
顧客は誰か
- 僕たちの大きなアドバンテージは、日本人であること。そして、日本人としてタイのビジネスを成功させてきた経験とノウハウがあること。だから、ターゲットを日本人に絞るというやり方は、将来も大きく変わることはないだろう。
- わりと日本に近く、日本企業の現地進出もさかん。首都バンコクに日本人が大勢いたから、日本人向け・現地向けどちらのビジネスも成り立つ。アフリカみたいに日本人がほとんどいない国では、現地の人に受け入れられなければ即終了だが、その心配はない。
海外でビジネスを行う際、まず考えるべきは「誰を顧客とするか」という点です。
ターゲットは大きく分けて、
- 現地の人(ローカル)
- 日本人(駐在員や長期滞在者)
- その他の外国人(欧米人・アジア圏など)
の3つに分類できます。
たとえばタイのように日本人が多く住む国であれば、「日本人向け」に特化したビジネスモデルは非常に合理的です。飲食店、美容サービス、日本語学校など、日本人ニーズに焦点を当てることで、一定の顧客基盤が見込めます。
一方で、ベトナムのように日本人の母数がそれほど多くない国では、現地顧客や外国人をターゲットに含める必要があります。現地文化や生活スタイルを理解し、ローカルに寄り添ったサービスを展開できるかが成功の鍵になります。
昨年アフリカを訪れた際、アジア人の姿をほとんど見かけませんでした。
そのような地域では、必然的に「現地向けビジネス一本勝負」になります。現地の価値観や生活習慣に合わなければ、あっという間に市場から淘汰されてしまいます。
一方で、日本人が一定数住む地域では、日本人向けと現地向けのハイブリッド型ビジネスを展開できる可能性があります。
つまり、日本人コミュニティが存在する国ほど、参入障壁が低く、ビジネスの立ち上げが比較的容易になる。そうした観点からも、アジア圏はやはりビジネスのイメージが描きやすいと感じます。
現地への理解
- タマサート大学院の MBA(経営学修士)コースに通いはじめた。これならタイ語を勉強しながら、 MBAを取ろうとするタイのビジネスマンに会える。
- タイで、タイの人の仕事や利益を奪ってしまうビジネスが、長続きするはずはない。自国民の仕事や利益を奪う外国人と見なされれば、なおうまくいかない。
- 考えてみれば、どの日本企業もこれまでタイに存在しなかった分野の工場を建てて製品をつくる。誰もタイ企業から仕事を奪っていない。逆に、これまでにない大きな雇用を生み出し、取引先のタイ企業も育てている。だから、どこからも文句は出ない。 ビジネスには Win- W inが必要だ、と最初の起業で気づくことができたのは、僕にとって本当に幸せだった。
安藤社長はタイに移住後、タマサート大学院のMBA(経営学修士)コースに通いながら、同時にタイ語も学ばれていたそうです。
同じくTJチャンネルのTJさんも、チュラロンコーン大学でしっかりとタイ語を学んでから活動を始めています。
この点は非常に重要で、現地で本気でビジネスをするなら、現地語の理解は欠かせないと改めて感じます。
言葉がわかれば、交渉や採用などの場面で通訳を介さずに済み、コスト削減にもつながります。
何よりも、現地の人々との信頼関係を築きやすくなる——これはお金には代えがたい大きな価値です。
また、本書の中で印象的だったのが、「現地ビジネスの利権を妨げるような事業は避けるべき」という指摘です。
これは実際の現場を知る者として、強く共感しました。
たとえば、外国人が現地で屋台を開けば、当然ローカルの生業とバッティングします。結果として長続きせず、現地からの反感を買うことにもなりかねません。
TJさんも過去の動画で、クラブ出店がうまくいかなかった理由の一つとして、近隣店舗からの妨害や摩擦があったと語っています。
ベトナムの場合も同様で、たとえばカフェやマッサージ業などはすでに現地市場が成熟しており、外国人が参入しても競合との摩擦が生じやすい分野です。
やはり現地で事業を行うなら、「現地にはない価値」を提供することが求められます。
本書でも語られているように、
自社 ― 顧客 ― 現地社会
この3者すべてが WIN-WIN-WIN になる関係を築けるかどうかが、成功の鍵だと感じました。
現地でビジネスをつくる
- どれも、僕が自分の目で見て気づいたこと──頭に浮かんだ直感が、ビジネスのきっかけだった。
- 起業はスピードが重要と言ったが、直感で動けばスピードは格段に上がる。
- タイでやった僕の起業に、資料を長時間読み込んだり、何人にも話を聞いて回ったりした挙げ句に決めた、というものは1つもない。
- もちろん、情報をたくさん集めるだけでは、ビジネスにはつながらない。得た情報から重要なものを選び出し、組み合わせて、「こうすれば、こうなるはずだ」というシナリオを作る。この段階で、僕は携帯販売業の成功を確信した。そして念のため、あれこれ条件を変えて──たとえば 1か月に何台仕入れて何台売れた場合はシミュレーションし、グッド・シナリオとバッド・シナリオを作る。
- もちろん世の中のマーケットやニーズにも目配りするが、自分自身を基準にして、あくまで「自分ならば買う」という点にこだわる。
- 逆に、僕が「自分なら絶対に申し込まない」と思うサービスや、「ちっともおいしくない」と思う食品を、僕が仕入れたり売ったりすることはない。
- 規模のメリットを生かす大規模な競争相手と正面衝突すれば必ず負ける。大量生産品と同じものをつくって売っても価格競争で勝てない。 大規模企業にできない、または気づかない〝隙間〟を狙う必要がある。
では実際に、現地でどのようにビジネスをつくっていくのか。
業種や形態はさまざまですが、やはり理想的なのは、自分の本業に近い分野、あるいは現地で得た情報や体験を掛け合わせて展開できる分野だと思います。
本書にも書かれているように、海外では「直感」こそが最大の武器になります。
資料を読み込むよりも、人の話を聞くよりも、百聞は一見にしかず。
実際に現地を歩き、肌で感じたインスピレーションこそが、次のビジネスの種になります。
そしてもう一つ大切なのが、当事者意識を持って俯瞰する視点です。
「自分ならこのサービスを本当に買うだろうか?」
この問いを常に持ちながら、冷静に判断することが重要です。
ただし、大量生産型のビジネスでは大手企業に勝つのは難しい。
だからこそ、隙間を狙う発想が欠かせません。
現地で仕入れたリアルな情報と、自分の直感、そして「心から自分が欲しいと思えるサービス」。
この3つが揃ったとき、初めて“現地発の持続可能なビジネス”が生まれるのだと思います。
他力本願にしない
- 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
- 起業で重要なのは「すべて自分 1人でやることだ」
- いずれにせよ、自分 1人で始めた事業を、分身と思える人を頼むというやり方で 2人、 3人とだんだん広げていく。自分がやってきたことを、徐々にメンバーに下ろしていく。
本書の中で印象的だったのは、「まずはすべて自分一人でやることの大切さ」に触れられている点です。
海外でビジネスを始めると、どうしても現地スタッフや通訳、マネージャーに任せたくなる場面が多くあります。
もちろん、組織を拡大していく上ではチームづくりも重要ですが、最初からすべてを他人に委ねてしまうと、事業の本質を見失いがちです。
まずは、自分自身がすべての業務を一通りできる状態をつくる。
仕入れ・販売・管理・プロモーションなど、すべてを経験したうえで、どこを人に任せるべきかを判断する。
この順番を間違えないことが、結果的にビジネスを安定させる近道だと感じます。
そして、次のステップとして大切なのは、「自分が築いたやり方を複製していく」こと。
任せるのではなく、仕組みとして再現できる形に落とし込むことができれば、規模を拡大してもブレない経営が可能になります。
つまり、他力本願ではなく、まずは自力で立ち上げる力を持つこと。
これが、海外という不確実な環境でビジネスを続けていく上での最大の武器になるのだと思います。
まとめ
冒頭で「10年前に出会っていたらよかった」と書きましたが、
正直なところ、20年前の大学時代に出会っていたら、その後の進路や決断はまったく違っていたかもしれません。
本書を読み進める中で、ベトナムでの駐在経験と重なる部分が数多くあり、深い共感を覚えました。
そして、「ああ、こういう考え方でスケールしていったのか」と、安藤社長の軌跡を通じて多くの気づきを得ました。
海外での挑戦は、情報やノウハウよりも、覚悟と実行力がすべてを左右します。
その本質を、これほどリアルに描いた本はなかなかありません。
これから海外で起業や挑戦を考えている方にとって、
本書はまさに人生を動かす一冊になるはずです。
